
スタートからフィニッシュまで、フルウエットコンディションで行われた日本 GPを終えた山本左近は、母国で体を休める間もなく、極東ラウンド2戦目の地である中国へ向かった。上海インターナショナルサーキットは、昨年左近が F1ドライバーとして、初めてレースで完走を果たした場所でもある。
その上海インターナショナルサーキットで、左近が所属するスパイカー・チームがグランプリ前日の木曜日に、あるイベントを催した。それはシャンパン・パーティ。F1では表彰台で繰り広げるシャンパンファイトとは別に、入賞したチームはそれぞれ自分たちのモーターホームやガレージなどで、スタッフたちが自分たちで用意したシャンパンでポイント獲得を祝う慣習がある。
日本GPでスパイカーは今シーズン初ポイントを左近のチームメートであるエイドリアン・スーティルが獲得したが、それは8位でフィニッシュしていたビタントニオ・リウッツィ(トロ・ロッソ)のペナルティによる繰り上げだったため、富士スピードウェイのガレージでシャンパンの栓を開けることはなかった。上海でのシャンパン・パーティは、難しいレースでチームが獲得した1ポイントを、あらためてみんなで分かち合い、中国GPも頑張ろうという決起集会 でもあった。
しかし、翌日から開幕した中国GPは、左近とスパイカーにとって、富士スピードウェイ以上に難しい週末となった。初日のフリー走行を終えた左近のコメントがすべてを物語っている。
「ロングランでは安定したタイムを刻めるんですが、ニュータイヤになるとバランスが変わって、グリップ力をうまく使い切れない。だから一発のタイムが伸びないんです」
そのため、左近は金曜日の走行データを元に、土曜日に向けてセッティングに変更を加えてみたものの、予選に向けて最後の練習走行となる3回目のフリー走行でも、なかなかスピードを上げることができなかった。
「アタックラップに入る前のタイヤの温め方もいろんなやり方を試してみましたが、結局予選でも改善は見られませんでした」という左近の中国GP公式予選は、22番手。チームメートとともに最後列からのスタートとなった。
そして、チームはレースに向けてギャンブルに出る。日曜日の上海インターナショナルサーキットは、台風の影響で、朝から雨が降ったりやんだりという荒れた天候。レーススタート時は雨は上がっていたものの、路面はウエットコンディション。さらに数分後に雨がやってくると予報されていた。スパイカーを除く全車がスタンダードウエット(浅溝)タイヤを装着してスタートを切ったのに対して、左近とチームメートのスーティルは雨が強くなることに賭けて、エ クストリームウェザー(深溝)タイヤを装着してスタートを切るのである。
「グリッド上でエンジニアと相談して、ギャンブルに出たんですが、天候が味方してくれませんでしたね」という左近は、わずか7周でスタンダードウエット(浅溝)タイヤに履き替えるためにピットイン。いきなり周回遅れに転落してしまう。さらに24周目の早めのドライタイヤへのスイッチも、その直後に雨が降り出して裏目となり、2周後にウエットタイヤに戻すという出入りの多いレースとなった。
それでも、チームメートのスーティルがその雨に足元をすくわれてリタイアする中、左近は2年連続ウエットレースとなった中国GPで連続完走。今年、トルコGPから続けている連続完走も5つに伸ばした。
「レーシングドライバーとして、完走は大前提。そのうえで、内容のある走りをしたい」と語る左近のこの日の走りを、テクニカルディレクターのマイク・ ガスコインはレース後、次のように評価した。
「あめが降ったりやんだりする難しいコンディションの中、左近はじつにいい 走りをしていたよ」
次戦・最終戦ブラジルでは今年の集大成となるマシンを操って、左近は上位を狙う。
